2026-08-03 14:15:34
テストを流すと開発中のデータが消える現場で、誰もそれを問題だと思ってなかった
「これ、もっといいやり方あるでしょ」を飲み込む現場
新しい現場に入って2〜3週間くらいすると、だいたい気づくことがあります。あれ、この作業のやり方、人によって全然違うな、って。
参入時の環境構築の手順も、開発の進め方も、明文化されたものがない。だから各自が先に入った人に聞いたり自分で試したりして、独自に解釈した手順を持っている。結果として、同じプロジェクトなのに全員が微妙に違うやり方で動いてる。
で、そこで「これ揃えた方がよくないですか」と言えるかというと、言えないんですよね。自分のやり方が正しいと言える根拠がないから。単に自分が違うだけかもしれないし、向こうには何か理由があるのかもしれない。そう思って自分で自分を黙らせる…
SESのメンバーが多い現場だと、この空気がかなり濃くなる気がしてます。
テストを流すと開発中のデータが消える
一番はっきり覚えてるのがこれです。Rails のプロジェクトで、テスト用のデータベースが開発用と統合されていた。
何が起きるかというと、テストを流した瞬間に開発中のデータが吹き飛ぶ。RSpec でもテストの前後でテーブルをきれいにするので、その掃除の対象が開発用のデータになってしまう。実際これは頻発しました。
ただ、致命的でもなかったんですよね。作業そのものが壊れるわけじゃない。データを作り直せば元に戻る。だから毎回、テストを流したあとに手戻りの時間だけ取られる。
統合された理由については想像するしかなくて、DBを2つ用意するのが面倒だったのか、それとも設定をいじった経緯が誰にも引き継がれなかっただけなのか。そもそも、その判断をした人がまだ現場にいたのかどうかも自分は知りません。まあ推測してもしょうがない。話が逸れました。
たぶん、この「致命的じゃない」が全部の元凶でした。壊れてくれた方がまだよかったのかもしれない…
「そうだね」で終わった
これはおかしいでしょ、と言いました。相手は同じチームのプログラマで、自分と同じSESで入ってる人。
返ってきたのが「そうだね」でした。それだけ。反対されたわけじゃない。「いや、それには理由があって」とも言われなかった。同意はしてくれたのに、何も動かなかった。
これ、けっこうきついんです。反対されたら反論できる。理由を説明されたら納得できる。でも「そうだね」には返す言葉がない。否定されてないから怒る先がないし、何も変わってないから納得もできない。そして次に何か言うためのコストだけが、静かに上がっていく。
無反応って、たぶん一番安全な却下なんだと思ってます。
リーダーはこの件に関心がなかった。悪意があったわけじゃなくて、単に見えてなかったんじゃないかと今は思ってます。テストを流すのは実装してる人だけなので、見に来ない人の視界には最初から入ってない。
言わないのは性格の問題じゃない
黙る人が受け身だから黙ってる、という話ではないと思ってます。言わない方が得になる構造がある。
契約が準委任なら、役割は決まったことを消化すること。改善提案は工数に乗らないので、やると自腹になる。数ヶ月から1年で抜けるので、直した果実を自分が受け取らない。逆に、放置した負債も自分の問題にはならない。営業を経由して伝わる評価は「あの人は扱いやすい」であって、技術的に正しかったかどうかは伝わらない。
そして標準がないと、そもそも「おかしい」の基準が持てない。database.yml の件は Rails のデフォルトという明確な基準があったから言えたけど、これがチケットの粒度とかレビューの出し方みたいな話だと、基準がないので言葉にならない。
標準の不在そのものが、発言を封じてるんじゃないかと思ってます。
全員が同じことを思ってる可能性はけっこう高い
不思議なのが、飲みに行くと同じ話が出てくることなんですよね。あれ非効率だよね、なんであれ直さないんだろうね、って。会議では誰も言わないのに。
これは多数の無知というやつなんだと思ってます。全員が不満を持ってるのに、全員が「そう思ってるのは自分だけかも」と誤解してる状態。誰も声に出さないから、沈黙が「みんな納得してる」の証拠に見えてしまう。
だから「そうだね」を返してきたあの人も、たぶん同じことを思ってたんです。同意してくれたのはそういうことなんだろうなと。ただ、動く理由がお互いになかった…
自分が受け入れる側になったら何を置くか
いま自分は入る側だけど、将来は受け入れる側になる可能性もあります。そのとき何を置きたいか、というのを考えてました。
まず、参入直後の手順書更新を最初のタスクにする。新しく入った人が「分かってない」を堂々と言えるのは最初の2週間くらいしかない。あの期間に気づいたことを手順書に書き足してもらう。書くのは提案じゃなくて作業だから、言うコストを払わせずに気づきを回収できる。「これおかしいと思います」と手を挙げるのは怖いけど、「手順書に書いておきました」は怖くない。
次に、「そうだね」を返さないようにする。出てきた意見には、やる・やらない・今はやらないのどれかを返す。やらないなら理由をつける。決めないなら「決めない」と決めて記録する。何も返さないのを禁止するだけで、体感かなり変わるんじゃないかと思ってます。宛先のない言葉は二度目が出てこないので。
3つめは、揃えるところとバラバラでいいところを先に書いておくこと。全部を統一する必要はないけど、揃ってないことが明示されてれば、指摘が「文句」じゃなくて「報告」になる。言う側の心理的なハードルはここでだいぶ下がると思う。
自分がやれる範囲ならやりたい、というくらいの気持ちです。組織を変えるとかそういう大きい話じゃなくて、自分が持ってる範囲でこれをやる。
まだ分かってないところ
無反応をなくせば言葉が出てくるのか、というのは正直まだ分かってません。
だって、言う側のコストはそのまま残るんですよね。数ヶ月で抜ける人が、抜けたあとの現場のために工数を使う理由を、受け入れ側が作れるのか。手順書を書かせるのは入ってきた瞬間だからまだ成立するけど、半年目の人が「これ直した方がいい」と言い出す動機まで設計できる気がしてない。
ここは自分がその立場になってみないと分からなさそうです。
よければ、いま自分の現場で「そうだね」で終わってる話がないか思い出してみてください。あれ、けっこう溜まってると思います。
これはclaude codeで生成しました。